楽になりな もうすぐラクになるから 辛いのは最初だけ 保障できるぜ?なにせ体験済みだから [涙]
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来る。 |
「っ、あっあああああ!!!」 思ったとおり、遂に発症した。 瞳孔が見開き、喉を、胸を掻き毟っている。 「あああああ!!あっあっあああぁぁぁぁ!!!!」 脂汗が滲んでいる。 生理的なものだろうか、涙が零れ落ちていく。 生き地獄の悲鳴をあげ、昇り昇り詰めたところで・・・急降下。 フッと、気を失ったようにそいつは事切れた。 ゆっくりと近づき、柔らかな蒼い髪をかきあげた。 閉じられた紅い瞳はもう、開かない。 フッ、と軽い溜息をつき こいつを埋める穴でも掘るか。と、思い立ち上がったとき。 俺はやっと、こいつの周りにあるモノに気づいた。 キラキラと青く輝く石 俺はそれを一つ手にとってみた 美しく、透明で青い宝石、どこか懐かしい宇宙(ソラ)の色・・・・ どうしてこんな美しい石がここにあるんだ? さっきまでは、こんな物はなかったのに。 この石の出所を考える前に、次なる事件が俺を襲った。 「んっ、ううん・・・・」 |
あいつが生き返ったのだ! |
とは言っても、息を吹き返しただけで目を覚ましてはいない。 結局、苦痛を味あわせただけ・・・ 研究所育ちは死ねないのか? まさか、そんなことはないハズ でも、どうして・・・・ 「ん、苦しい…っよ…スウにぃ…ちゃ」 息を荒くさせ、胸を押さえながら寝言を呟く。 さっきの苦痛がまだ、精神的に残っているんだな 近くにより、なんの慰めになるかは判らないが とりあえず手を握ってやることにした。 すると、安心したのか呼吸がだんだんと落ち着いてきた。 「スゥにいちゃん・・・・」 その言葉と共にこいつの瞳から涙が流れた。 そのとき、俺はやっと気づいた。 こいつの左目から流れ落ちる涙の変化に 溢れてくるときは、普通と同じただの水滴 しかし、ひとたびその瞳から零れ落ちると 水滴は形を変え、青く美しい石になった。 これはお前の涙からできていたのか・・・ なんて美しい石だ・・・ 「ん、うぅん…スゥにいちゃん」 「あ、起きたのか」 「スゥにいちゃん、あのねさっきスゴク苦しかったんだ、どうしてだろ?」 なにも判っていない、こいつの無邪気さが ちくりと、暖かくも冷たい針になって俺を刺した。 もう一度、俺はこいつの手を握り締めた さっきよりも強く 「スゥにいちゃん・・・?」 「大丈夫だよ、兄ちゃんがついているだろ?」 「・・・うん!」 また、宇宙色の石が零れ落ちた まったく、苦しめた張本人は俺なのに・・・なに嘘ついてんだ? 本当のことを言ったら、こいつを突き放してしまう こいつはまた独りになる そんな想いをさせたくない だから俺は一生黙っておく 醜い嘘をついたはずなのに、何故か気分がいい 安心したからか? 傷つかずにすんで・・・ 誰が? 誰?あいつに決まってるじゃないか? 俺がなんの為に、傷つくっていうんだよ? なんの為に いったいなんの為に・・・・ : : そして、いつの間にやら2,3年の月日が流れた 俺もあいつも何一つ変わりなく、過ごしていた いや そういえば、変化じゃない変化が一つだけあった あいつは見た目でいえば、もう14,5歳はいっている ちょうど成長期だ、それが2,3年もすれば 確実に成長するはず、それが全くなにも変わっていないのだ まぁ、髪が伸びるとかはするんだけど・・・ かくいう俺もそう・・・なんとなく成長している気がしない つまり結論はひとつ 年を取らなくなった 畜生・・・もう少し背伸ばしたかったのによ しかし問題は、何故年をとらなくなった? 前までは年をとっていた、そう歳をとっていったから いつか寿命で死ぬのか?と、思っていた。 死ぬ・・・? あれ、そういえば、 歳を取る=寿命がある=死ぬ じゃあ、どうして生き返った? あいつも、約10年前の頃の見た目と初めて出会った頃の歳が一致する つまり、今まで年をとっていた それなのに、何かのキッカケで歳をとらなくなった キッカケ? 俺の中で、仮説と言う名の結論がでた あの毒だ。 そう、俺はもう一つ自分に変化があったのを思い出した。 俺の体内から、毒が消えている ちょうど2,3年前、街から奇病騒ぎが消えたのだ 忘れてたってことは、やっぱり重要じゃなかったんだな まぁ、あいつと一緒になりはじめてから 俺の気まぐれも滅多にでなくなってたからなぁ いやだろう?兄と思って慕ってる奴が気まぐれで人殺してるなんて ・・・アレ? なんだ、今の良心的な考え? とりあえず話しを戻して、2,3年前に俺の身体から毒が消えている そしてその頃から、俺たちは年をとらなくなった 共通点は、俺もあいつも俺の毒を体内にいれた ここでもう一つ仮説 俺が毒の血を飲んだとき、俺は死んで。 また生き返った、こうは考えられないだろうか 俺の体内に入った毒―これを10としよう― それは元々俺のなかにあった毒−これも10としよう―すらも殺そうとした しかし、共食いをしようとさえする強烈な毒は 全て死ななかった―ここで死んだ毒を8としよう― 奇跡的に入ってきた毒が2残ってた―元の体内にある毒も2残っている― それが俺の成長機能―時間―を殺した そして、その後俺はあいつに毒をやった 残っていた毒はたった2―これで俺のなかにある毒は0になる― そして入ってきた毒2はあいつの時間も殺した。 ―あいつは毒持ってないからな― 倒れたのは毒の症状がキツくて、そのショックで一瞬仮死状態になった ややこしいが、そうは一応考えられる 要は俺のなかにあった毒と入った毒でほとんどが 中和されたが、まだ生きていて俺の寿命を殺し 中和されずに、わずかに残っていた俺のなかの毒が あいつの寿命も殺した。 最初からこう解釈したらよかったな。 死なない身体か・・・あんまり実感湧かないんだな 「スゥ兄ちゃぁん♪」 向こうから、可愛い俺のオトウトが呼んでいる。 俺はさっきまでの、考えを全部丸めて捨て。 オトウトのところに歩いていった。 オトウトは嬉しそうに、ポケットの中からなにか取り出した。 「見て見て!ほらネックレスにしてもらったんだ♪」 それは昔オトウトの涙から出来た、宇宙(ソラ)色の石。 俺が折角だから、といって大切に保管していたら オトウトが街の細工屋で、石を繋げてネックレスに加工してもらったらしい 綺麗な宇宙色が、オトウトの首元から胸元でキラキラ輝いている。 |
ウツクシイホウセキ・・・ |
!!? 今、背筋がゾクリと凍りついた。 なんだ?なんだ今の嫌な気配は?! 誰かが俺を見ていた? 俺を?俺たち・・・を?? 「綺麗でしょ?」 身を強張らせていた俺に、オトウトは明るく話し掛けてきた。 こいつは何も気づいていない。 それに安心し―不安になった だけど、まぁ気にしてもな・・・もう気配しないし やれやれ、近頃は物騒だな 「スゥにいちゃん?」 「ああ、ゴメン。凄く綺麗だな」 「本当はさぁ、スゥにいちゃんの分も作りたかったんだ」 「そんな、別にいいよ」 「僕がよくないの!今度また泣いたときに、石とっとくね♪」 いや、笑顔で言われても困るんだけど・・・ まぁ、本人が楽しそうならいいか とはいえ、俺はそろそろこの地を離れようと考えていた。 いつまでも、同じ場所に成長しない人間(?)が いるのも問題だ、元々放浪するのは好きだし、 色々な世界をこいつに見せてやりたい。 特に今俺が風の噂で聞き、興味をもったのは メルヘン王国 こことは違うもう一つの世界。 そこには、伝説にある。 コウモリ族や犬人間がいるらしい―なんか違うな? まぁいい、そこにいけば。 この青い肌ももう少しマシに見れるだろうか? ついでに寿命もこなくなったし、ますます人間離れしたことだし。 是非とも行ってみたい。 しかし、問題はあいつがなんていうか ここが気に入っているみたいだし ―何故か街の皆が優しい― だけど、どうせなら連れて行ってやりたい 駄目もとで聞いてみるのがやっぱ一番だな。 : 「メルヘン王国・・・?」 「ああ、今度そこに行こうと思う」 「・・・そう」 「あー、と・・・お前はどうする?」 「・・・え、と、どうしようかな」 「別に今じゃないからゆっくり考えろよ」 「うん」 それから2,3日。 まだ返事は来ない。 まぁ、気に入った土地から離れるのは辛い。 しばらく悩むだろうな。 まっ、急ぎではないのだから構わないけど。 ふと上を向くと、いつの間にか空は朱色 黒い天使たちがもう帰れ、とラッパを鳴らしていた。 街のほうに目を向けると、またあいつが街におりていった。 まさか、もう石をつくったのか? それは流石にないはず・・・それなら まさか・・・ 俺はそっと、あいつの後を追った。 そして、俺は見てしまった。 楽しそうに女と話すあいつの姿を・・・・ 結構美人だ。 あぁ、だから離れたくなかったわけか まぁ、あいつも男だし 女の一人や二人ぐらいいるだろう 俺なんて、その街その街に20人くらいはいたし ―なのに・・・ この虚しさはなんなんだろう・・・・ スゥにいちゃんの所に帰る頃には、あたりはすっかり カラス色。細工屋の女主人さんに、作ってもらってたんだよなぁ。 本当は石はあと一つ残っていた、でもスゥにいには内緒。 みせて驚かせたかったんだ、この宇宙色の石でつくった イヤリング。 スゥにいちゃん、喜んでくれるかな? 今から胸がどきどきしてきた。 その気持ちを映し出すように、僕のネックレスの石も キラキラしている。 いそいで、スゥにいのところへ帰ることにした。 今日は星が綺麗だから、きっと丘の上にいるはず。 ほら、いた。 でも、スゥにいちゃんはもう寝ていた。 疲れてたのかな?なら仕方ないね。 明日になったら、このイヤリングを渡そう。 それから、メルヘン王国に行く!って言おう。 これができるまでは、やっぱり返事出しにくかったんだよね。 細工屋さんがいうには、珍しい石だったからイヤリングのような 小さい装飾品にするのに、いつもの倍時間がかかったらしい。 でも、ちゃんとできて良かった。 イヤリングをきゅっ、と大切に握り締める。 スゥにいちゃんと、初めての旅。 楽しみだなぁ。 きっと楽しいだろうなぁ。 スゥにいちゃんと、色んな景色が見れる 色んな世界が見れる。 色んな想いでができる。 わかっている、スゥにいちゃんが本当のお兄ちゃんでないのは でも、僕は今のスゥにいちゃんが大好き。 ずっと、一緒にいたいなぁ・・・ ううん、絶対一緒にいたい。 優しい寝息を立てている、スゥにいちゃんの横に寝転がる。 小さな声で「おやすみなさい、また明日ネ。」と、言ってから 僕も眠りにつく。 おやすみなさい、また明日ネ。 僕のおまじない。眠る前にいつも言う おやすみなさい、また明日ネ。 また明日も一緒にいれますように 星がとっても綺麗。 お月様も綺麗、綺麗な真ん丸のお月様。 おやすみなさい 風が揺らす、草花たちを夜を闇を・・・ 草木がざわめく、どこからか声が聞える |
ウツクシイホウセキ アノコドモガウミダシテイルノカ? ジツニキョウミブカイ ホシイ・・・ アノホウセキガホシイ ホシイ!! |
風が揺れる、水の流れのように、夜を揺らしていく 若葉色の髪の青年が、揺れる草原のなかで 眠りについていた。 「っくしゅ・・・」 夜風の冷たさに目が覚めた。 おかしいな、今の季節ならもう少し暖かいはずなのに・・・ 「おい、寒くない・・・・か?」 上着を一枚脱ぎ、横にいるオトウトにかけようとした。 だけど いつも横にいるはずの弟の姿はどこにもいなかった。 |
―to be continue― |
はい、第4話終了です。 スマイルの涙から創られた宝石は 一応この世には存在しない、宝石なのですが モデルとしては、ブルーサファイアという宝石です あらゆる青のなかでもっとも純粋で完璧な青といわれています。 興味のあるかたは、調べてみてください。 背景画像は「Little Eden」様より。 +BACK+NEXT+ +CLOSE+ |